ドローンの屋根への塗布材(洗浄剤・遮熱塗料・防錆剤など)散布は、足場設置コストを削減し、安全性を高める画期的な手法です。しかし、液体の飛散管理や機体の重量変化など、通常の空撮とは異なる高度な運用が求められます。
1. 施工前の準備と現場確認
屋根塗装・散布特有のチェック事項です。
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近隣への周知と養生:
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塗料や洗浄剤の「飛散(ミスト)」は想像以上に遠くまで飛びます。近隣の車や洗濯物への影響を確認し、必要に応じてカーカバーの配布や養生を行います。
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風速の確認:
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風速 3m/s 以上の場合は作業を中断検討してください。液剤が流されて均一に塗布できないだけでなく、機体の安定性も損なわれます。
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障害物の特定:
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電線、アンテナ、太陽光パネル、天窓、換気口の有無を事前に確認し、飛行ルートから除外します。
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2. 機体と散布システムのセットアップ
液体を積載するため、機体のバランスとポンプの動作確認が肝心です。
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散布ノズルの点検:
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ノズルが詰まっていないか、水を通しテスト噴霧を行います。
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粒径(ドロップレットサイズ)を塗料の粘度に合わせて調整します。
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タンクの装着:
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重心位置がズレないよう、タンクが確実に固定されているか確認します。
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重量制限: 機体の最大離陸重量(MTOW)を絶対に超えないよう、液剤の量を計算してください。
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ポンプ・ホースの接続:
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接続部からの漏れがないか確認します。漏れた液剤がモーターやセンサーに付着すると故障の原因になります。
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3. 飛行・散布オペレーション
屋根塗装では「高度維持」と「オーバーラップ(重ね塗り)」が品質を左右します。
① 離陸とアプローチ
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段階的積載: 最初はタンクを半分程度にして機体の挙動(慣性)を確認し、慣れてからフル積載に移行することを推奨します。
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安全距離の確保: 屋根面から 1.5m 〜 3.0m の一定高度を保ちます。近すぎるとダウンウォッシュで液剤が飛散し、遠すぎると付着効率が落ちます。
② 散布パターン
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等速飛行: 塗りムラを防ぐため、一定の速度(例:2.0m/s程度)で横移動(サイドステップ)しながら散布します。
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オーバーラップ: 前の散布ラインと 30% 〜 50% 重なるように次ラインを通します。
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端部の処理: 屋根の軒先(エッジ)では、飛散を防ぐため早めに噴霧をストップします。
③ 液体減少による挙動変化
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重量変化への対応: 散布が進むにつれ機体が軽くなり、上昇しやすくなります。常に高度計を確認し、微調整を行ってください。
4. 安全管理と緊急対応
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液切れアラート:
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空打ち(ポンプの空回り)を避けるため、タンク残量が 10% を切ったら速やかに帰還・補充します。
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緊急着陸地点の確保:
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万が一の墜落に備え、人や障害物のない「緊急着陸エリア」を常に意識して飛行します。
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万一の付着:
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機体やセンサーに塗料が付着した場合は、固まる前に専用の洗浄剤(機体素材を傷めないもの)ですぐに拭き取ってください。
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5. 終了後のメンテナンス
塗布作業において、最も重要なのが**「清掃」**です。
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システムの洗浄:
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タンク内およびホースに清水(または指定の洗浄液)を入れ、ノズルから透明な水が出るまで数分間循環・噴霧させます。
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重要: 内部で塗料が固まると、ポンプごと交換が必要になる高額な修理に繋がります。
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機体全体の清掃:
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プロペラやモーター周辺に霧状の塗料が飛散していないか確認し、拭き取ります。
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バッテリー点検:
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重量物を運搬したため、バッテリーへの負荷が高くなっています。膨らみや異常な発熱がないか確認してください。
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