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電波の「死角」をどう埋めるか──長距離インフラ点検・山間部運用を支える通信インフラの最前線

ドローンの遠隔運用や自動運航が実用段階に入るなかで、意外と見落とされがちなのが「通信」の問題です。機体の性能や飛行許可ばかりに目が向きがちですが、実務者の間では「電波が届かない」「途中で通信が切れる」といった悩みが、ミッションそのものを断念させる原因になってきました。

特に山の裏側、送電線や河川に沿った長距離点検、携帯回線が届かない過疎地などでは、電波の死角が長年のボトルネックになっていたと指摘されています5。今回は、こうした通信の壁を越えるための機材・クラウド・規制の三つの側面を、受講検討者や現場の実務者の目線で整理してみます。

なぜ「通信」がボトルネックになるのか

遠隔・目視外(BVLOS=操縦者が機体を直接見ずに飛ばす方法)の運用では、機体を安定して制御し、カメラ映像をリアルタイムに送り続ける必要があります。ところが遮蔽物による電波の陰や、単純な到達距離の限界により、途中で信号が切れてしまうケースが少なくありません5

ドローンポート(自動離着陸・充電基地)を使った常駐型の運用が広がるほど、「機体をどこから飛ばすか」と「通信をどう確保するか」を両立させる難しさが増します。裏を返せば、通信を安定させられれば運用できる現場は一気に広がる、ということでもあります。

地上局で「距離」と「障害物」を越える

この課題への一つの回答が、DJIが投入した通信拡張デバイス「DJI O4 Ground Station」です。ドローンとドック間の通信を中継・拡張する地上局で、見晴らしのよい場所に置くことで、基地から数十キロ離れた送電線や河川に沿った片道点検が可能になるとされています5

注目したいのは、機体の離着陸場所と別の位置に地上局を設置できる点です。従来はドックの設置場所自体を電波条件に合わせる必要がありましたが、遮蔽物の陰にドックを置いても、地上局を電波の弱いゾーンに配置して補える構図になります2

ハード面では、IP67の防塵防水、マイナス40度から55度までの動作、12個のアンテナアレイによる無指向性の通信などが挙げられており、過酷な屋外常設を想定した設計です5。加えて、遠距離飛行中もRTK(位置情報を高精度に補正する測位技術)の補正データを維持できる点は、測量や点検で精度を求める現場にとって実利のある機能でしょう2

ただし導入前に押さえておくべき制約もあります。給電はPoE(LANケーブルで電力も供給する方式)のみで、内部電源は約45分ほどのため、電源のない現場ではポータブル電源とPoE機器がセットで必要になります2。また、日本の電波法(5.8GHz帯などの出力制限)の兼ね合いで、無線で直接中継する「リレーモード」は国内では使えず、インターネット経由でクラウドにつなぐ「ゲートウェイモード」が運用の主役になります52。裏返せば、山奥でもStarlinkなどの衛星通信と組み合わせれば、携帯キャリアの圏外でも運用ルートを開ける、という発想です。高額になりがちな4G通信費を抑える代替手段としても検討できるとされています5

「見る側」の環境もクラウドで変わる

通信は現場だけの話ではありません。撮った映像を関係者にどう共有するかも、遠隔運用の重要な一部です。DJIのクラウド基盤「DJI FlightHub 2」は2026年5月8日のアップデートで、空撮用ドローンやアクションカメラの映像も、インターネット経由でどこからでもリアルタイム共有できるようになりました3

これまでは特定の送信機やHDMIケーブル、分配機器をそろえる必要があった映像共有が、送信機とPC(またはスマホ)というシンプルな構成で完結する方向に進んでいます3。地上局側でも、対応するIPカメラを接続すれば、空からの映像と地上の固定カメラ映像を一つの画面で監視でき、レベル3.5飛行で求められる上空の監視を一元管理する使い方もあり得るとされています2。ただし映像視聴には視聴時間に応じた有料ライセンス(従量課金)が絡むため、運用規模に応じたコスト設計が欠かせません3

通信を整えても「飛べる場所」の確認は別問題

通信環境を整えても、その空域で飛ばしてよいかは別の確認事項です。2026年7月14日から、ドローンの飛行禁止エリアが拡大されました1。飛行禁止エリアで飛ばす場合は、航空法の許可・承認とは別に、都道府県公安委員会などへの事前手続きが必要になります1

長距離点検のように広範囲を飛ばす運用ほど、飛行ルートが対象エリアに触れていないかを事前に確認する重要性が増します。飛行計画の前にDIPS2.0や地理院地図で対象エリアを確認する習慣は、遠隔運用時代の基本動作と言えるでしょう1

機材選びと同じくらい「導入後」を考える

こうした通信機器やクラウドは、設定や運用の相談ができる体制があってこそ活きます。実際、購入した機体のアクティベーション方法が分からない、購入先のサポートが受けられないといった相談は少なくないと報告されています4。正規のルートで購入し、初期設定から運用支援、修理まで一貫して相談できる窓口を確保しておくことが、遠隔・長距離運用ではとりわけ効いてきます4

まとめ

遠隔・自動運航の広がりは、「機体をどう飛ばすか」だけでなく、「どうつなぎ、どこで飛ばし、誰に見せるか」までを含めた総合力で決まる段階に入っています。地上局による通信拡張、クラウドでの映像共有、飛行禁止エリアの最新確認、そして導入後のサポート体制──これらは別々の話に見えて、実際の現場では一続きの運用設計です。

西濃ドローンアカデミーでは、国家資格の取得にとどまらず、こうした通信や法令、運用設計まで見据えた学びを大切にしています。機材の進化を「自分の現場でどう使うか」に落とし込む視点を、一緒に磨いていければと思います。

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