「見て、運ぶ」を一台に頼らない──国産ドローン連携が変える林業・建設現場の作業分担

ドローンを現場に導入するとき、多くの人は「空撮で調べる」用途か「物を運ぶ」用途のどちらかを思い浮かべます。しかし実際の作業現場では、状況を確認する工程と、資材を運ぶ工程はセットで発生します。最近の国産メーカーの動きを見ると、この「調べる」と「運ぶ」を別々の機体で分担し、ひとつの提案としてつなげようとする流れが見えてきました。今回は、受講検討者や現場担当者の目線で、この動きの意味を整理します。
国産の運搬ドローンが「林業専用」の枠を出はじめた
まず注目したいのが、運搬用ドローンの価格と扱いやすさの進化です。マゼックスの新型「軽助(かるすけ)」シリーズは、従来機「森飛(もりと)25」と同等の積載力を保ちながら、価格を税抜263万円から190万円へ引き下げ、機体面積を約64%小型化しました1。バッテリーを2本1組で交互に使い、片方を飛ばしている間にもう片方を充電できる設計で、作業のリズムを止めにくくしている点も現場向きです1。
この「軽助」の源流にあるのが、マゼックスと住友林業が共同開発し2020年2月に発売した国内初の林業用運搬ドローン「森飛」です。四国の社有林の急傾斜地で計4万本の苗木を運ぶ実証を重ねて生まれ、林業用ドローンの年間販売台数で2年連続の国内トップシェアを獲得したとされています1。
興味深いのは、後継の「軽助」が林業だけでなく、農作物や電力設備の資材、建設部材の運搬まで想定した多用途機(最大55kg/25kgの積載)として展開されている点です2。運搬ドローンが「林業専用の道具」から「山間部・現場全般の運び手」へと役割を広げている、と言えるでしょう。
「調べる機体」と組ませて、ひとつの現場提案にする
さらに一歩進んだ動きが、2026年7月に発表されたマゼックスと石川エナジーリサーチの業務提携です2。両社は、運搬を担う「軽助」と、調査・点検を担う純国産機「ビルドフライヤーchrome」を組み合わせ、建設・土木・林業・防災・点検・調査といった分野での活用拡大を目指すとしています2。
「ビルドフライヤーchrome」は、企画から製造・サポートまで国内一貫体制でつくられる産業機で、最大20m/sの強風下でも飛行できる安定性と、雨天飛行に対応するIP23の防水性能を備えます2。飛行時間は無積載で約40分、最大4.4kgの機材を積んでも約25分とされ、ミラーレスカメラや赤外線カメラ、レーザー測量機などを付け替えられます2。数センチ単位で位置を取るRTK測位や水平360度の障害物センサーもオプションで用意されています2。
注目すべきは、両社が掲げる「調査・確認」と「運搬」を組み合わせた提案という発想です2。たとえば災害後にまず被災状況を空から確認し、続けて緊急物資を運ぶ、あるいは林業現場で森林や作業道の状態を確認したうえで苗木や資材を運ぶ——こうした一連の流れを、別々の道具の寄せ集めではなく、ひとつの現場運用として設計できる意味は大きいと考えます。実務者にとっては「機体を買う」から「作業の段取りごと組む」へと発想が変わる話です。
数字が示す、林業現場の切迫感
なぜ今こうした動きが加速するのか。背景には林業現場の厳しい実情があります。林野庁「令和7年度 森林・林業白書」によれば、林業従事者の高齢化率は25%、労働災害の発生率は全産業平均の約10倍にのぼるとされています1。林道から離れた急傾斜地を人が何度も往復して苗木を運ぶ作業は、身体的な負担も転倒・滑落のリスクも大きい1。運搬をドローンに任せれば、人は植栽や保育といった作業に集中でき、危険な運搬回数そのものを減らせます1。安全と省力化を同時に狙える点が、導入を後押ししていると読み取れます。
山間部で運用を成立させる「通信」という土台
調査機と運搬機を山の中で動かすとき、忘れてはならないのが通信環境です。山の裏側や携帯電話の電波が届きにくいエリアでは、通信の切断が長年のボトルネックでした4。この課題に対し、DJIの通信拡張機器「DJI O4 Ground Station」は、見晴らしの良い場所に置いて中継点とすることで、電波の届きにくい現場でも安定した飛行と映像伝送を可能にするとされています34。Starlinkなどの衛星通信と組み合わせれば、キャリアの電波エリアに縛られずに運用でき、4G通信費の削減も見込めます34。
「見る機体」「運ぶ機体」「つなぐ通信」がそろって初めて、山間部や災害現場での遠隔・省力運用が現実味を帯びます。単体の性能だけでなく、これらを一連の仕組みとして考える視点が、これからの現場には求められそうです。
まとめ:道具選びから「作業の設計」へ
今回見てきた動きに共通するのは、ドローンを「一台の万能機」に期待するのではなく、役割の違う機体と通信をつなげて現場全体を回す、という考え方です。運搬機の低価格化と多用途化、調査機との連携、そして通信インフラの整備が同時に進むことで、林業や建設、防災の現場は「調べてから運ぶ」を一続きで設計できるようになりつつあります。
こうした運用を安全に回すには、機体の操縦技術だけでなく、飛行の段取りや安全管理、法令の理解が欠かせません。西濃ドローンアカデミーでは、実際の現場を想定した学びを通じて、こうした「作業を設計できる」人材づくりをお手伝いしています。導入を検討する第一歩として、まずは自分の現場でどの工程をドローンに任せたいかを整理してみてはいかがでしょうか。
情報リソース
- MAZEX(マゼックス)/マゼックス、住友林業との連携により林業向け運搬ドローンの普及を加速 | 農薬散布等の産業・農業用ドローン製造メーカー【マゼックス】 — 取得日: 2026-07-22
- MAZEX(マゼックス)/国産産業用ドローンの活用拡大へ向けた業務提携のお知らせ | 農薬散布等の産業・農業用ドローン製造メーカー【マゼックス】 — 取得日: 2026-07-22
- セキド(産業用ドローン)/DJI O4 グラウンドステーションで通信課題を解決|伝送距離の拡張とDJI Dock 3活用を解説 – セキド オンラインストア — 取得日: 2026-07-22
- システムファイブ(DJI情報)/より遠くへ、通信距離を拡張する「DJI O4 Ground Station」 — 取得日: 2026-07-22
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