ネギのドローン農薬散布は難しい?高水量散布と倒伏対策を実務目線で

「長ねぎにドローンの農薬散布は使えるのか」——結論から言えば、条件を整えれば十分に実用の射程に入ります。鍵になるのは、少量散布ではなく「高水量でしっかり濡らす」散布を実現できる大型機の活用と、散布時の風で株を倒さないための土寄せ(土上げ)という栽培管理です。この記事では、茨城県のネギ農家が検討している導入事例をもとに、水稲や果樹とは少し勝手が違う「ネギ防除とドローン」の論点を整理します。
なぜネギは「少量散布」だと物足りないのか
まず前提として、同じ農薬散布でも作物によって求められる散布の性格が違います。水稲の除草剤などでは、高濃度の薬液を少量だけまく「少量散布」が効率的です。ところがネギの病害防除では、薬液が点々と付くだけでは効果が出にくく、動力噴霧器(動噴)でかけたときのように、葉から水滴が滴る程度までしっかり濡らしたいという現場の声があります1。
関東で主流の長ねぎ(白ねぎ)は、白い部分を長く育てて鍋物などに使うタイプで、関西で多い葉を食べる葉ねぎとは栽培の考え方も異なります1。このため、浸透移行型の薬剤を点在させる使い方よりも、表面を広く確実に覆う散布が向く場面が出てきます。
従来の小型〜中型機(T25など)では、水量を絞って高希釈でまくスタイルが基本で、ネギのように「水量を多くしたい」ニーズとは相性が悪いとされてきました1。動噴や乗用管理機のブームが水量を多くまける点でドローンに勝っていたのは、まさにこの部分です1。
T70クラスの「高水量散布」という選択肢
ここで注目されているのが、10aあたり100〜150L程度の高水量散布に対応できる大型機です。これまで10aあたり100Lといった依頼は小型機では断っていたものの、T70クラスなら稲作の除草剤散布で70L・100Lといった水量を無理なくこなせる手応えがあるといいます1。
送信機側で液滴(粒)の大きさを調整できるため、作物や狙いに合わせて散布の質を変えられる点も実務上は大きな利点です1。70〜100L程度まけば、動噴に近い付着状態を狙えるという見立てが語られています1。
さらにドローンならではの強みが、圃場の足元環境に左右されにくいことです。大雨の後などで動噴や乗用管理機が入れないぬかるんだ条件でも、空からアプローチできます1。年間を通して出荷を切らせない契約栽培では、「天候で防除が遅れる」リスクを減らせることは経営的にも意味があります1。
ダウンウォッシュと倒伏——土寄せが効く理由
一方で、大型機の高水量飛行で避けて通れないのが、強いダウンウォッシュ(機体下向きの風)によってネギが折れる・倒れる懸念です1。ここで現場が注目しているのが、ネギ栽培でもともと行う「土寄せ」です。
長ねぎは白根を長くするために土を寄せて育てる作物で、マルチ栽培の作物とは違い、土寄せによって株元が支えられます1。土をしっかり寄せて株を安定させてから散布すれば、大型ドローンの風にも耐えやすくなるのではないか、という発想です1。出荷前には光による緑化(白と緑のグラデーション)を防ぐため、際まで土を寄せる「止め土」を行いますが、この作業がそのまま株の支えにもなります1。つまりネギは、土寄せという栽培上の工程が、むしろドローン散布に有利に働く可能性があるわけです1。
農薬登録のルールも確認を
散布方法を変えるときに必ず押さえたいのが農薬登録です。理想は「高濃度・少量散布」向けのドローン用登録がある薬剤ですが、現状そうした登録は多くありません1。
ただし数年前の農薬取締法の改定により、無人航空機(ドローン)としての登録がなくても、ラベルに「散布」の記載があり、指定の希釈倍率と10aあたりの使用量を守ればドローンで散布できるようになっています1。例えば1000倍で100L散布といった条件を守る形で、ドローン散布を試すことが可能です1。新しい機材や手法を導入する際は、必ず使用する薬剤のラベルを確認し、倍率と使用量の範囲内で運用することが前提になります。
「飛びつく」前に、自分の圃場条件で考える
最後に、機材選びの姿勢についても触れておきます。多品目の露地野菜経営では、ドローン散布はあくまで「外注という選択肢の一つ」として位置づけられ、条件によって最適な手法や道具は変わるという指摘があります2。新しい技術に魔法のように飛びつくのではなく、自分の作物・圃場・経営に照らして考える農家であることが大切だ、という視点です2。
ネギの例でいえば、「高水量散布ができるか」「土寄せで倒伏を防げるか」「使う薬剤がドローン散布の条件を満たすか」という3点が、導入可否を分ける現実的なチェックポイントになります。小型機では難しかった作物でも、機体の進化と栽培管理の工夫を組み合わせれば、省力化の余地は確実に広がってきています。
ドローンの国家資格取得をお考えの方は、西濃ドローンアカデミー(https://license.seino-drone.com?utm_source=blog&utm_medium=organic)の講座情報もご覧ください。農薬散布を業務で行うなら、機体の操作技術だけでなく、作物ごとの散布設計や法令遵守の知識も含めて身につけておくことをおすすめします。
情報リソース
- エアーアシストジャパン(YouTube)/[Large Drone x Green Onions] T70P High-Volume Spraying Demo Flight at KEI’s Farm in Ibaraki! Is I… — 取得日: 2026-10-08
- エアーアシストジャパン(YouTube)/[The Unconventional Farmer Series] Hisamatsu Farm, masters of multi-crop cultivation: Their chall… — 取得日: 2026-10-08
西濃ドローンアカデミーの詳細はこちら
西濃ドローンアカデミー(無人航空機の国家資格講座)
この記事へのコメントはありません。