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ドローン農薬散布の落とし穴|直播と移植で農薬登録が違う

「同じ除草剤なのに、水稲の作り方が違うだけで使える条件が変わる」――ドローンで農薬を散布するとき、意外と見落とされがちなのがこの点です。結論から言えば、農薬のラベル(登録内容)は「直播(じかまき)水稲」と「移植水稲」で別々に定められていることがあり、散布前にどちらの登録かを必ず確認する必要があります。これを怠ると、正しく効かないばかりか適正使用から外れてしまう恐れがあります。本記事では、水稲除草剤の散布事例をもとに、実務者が押さえるべき確認ポイントを整理します。

混合剤の便利さと、その裏にある注意点

取り上げるのは、直播水稲の圃場で除草剤「ノブレクト」をドローン散布した現場の事例です。使用機体は中型のDJI AGRAS T25で、少量散布にも対応します1

ノブレクトは、広葉雑草(ホタルイなど)に効く成分と、ヒエに効く成分をあらかじめ組み合わせた混合タイプの除草剤という位置づけです1。従来は単剤を使い分け、どの薬剤をいつ撒くか判断に迷う場面がありましたが、混合剤なら一度の散布で複数の雑草に対応でき、作業計画を立てやすくなります1

ここで重要なのが「それなら自分で単剤を混ぜれば同じでは」という発想の落とし穴です。混合剤を構成する単剤には、それぞれ独自の登録があります。例えばヒエ用の単剤は無人航空機での散布登録が定められ、広葉雑草用の単剤は一定以上の希釈水量が前提になっています1。安易に自作すると、登録の枠から外れてしまう可能性があるのです。

「直播」か「移植」かで、使い方の数字が変わる

もっとも注意したいのが、直播と移植で登録内容そのものが異なる点です。今回の事例では直播水稲の登録を確認し、10aあたりの使用量250mL、希釈水量25〜100Lという条件で散布しています1

さらに構成成分の単剤に目を向けると、広葉雑草用の成分は移植水稲では10aあたり25Lの散布でよいのに対し、直播水稲では100Lの散布が必要とされます1。つまり「移植で通用した数字」をそのまま直播に持ち込むと誤りになりかねません。散布前にラベルを開き、自分の圃場がどちらの栽培方式なのかと照らし合わせる――この一手間が、適正使用の入口になります。

除草剤ならではの散布設定

除草剤は、周囲への飛散(ドリフト)を抑えることが特に大切です。事例では散布幅を約3.85m(一段上げると広がりすぎるため)に設定し、液滴のサイズも飛びにくい大きめの値を選んでいます1。飛行速度は約8km/h。10km/h前後になると風の渦や薬剤の落下が起きやすい境目になるため、それ以下に抑えるのがコツです1。作物からの飛行高度は2m、散布量は25L/10a(ヘクタール換算で250L)で、単位の取り違いに注意が必要とされています1

飛ばす前の点検と、安全な操作

設定以前に、散布装置が正しく動くかの確認も欠かせません。事例では、薬剤を一度に満タンにせず少量だけ入れて重量・液面センサーが反応するか確かめ、その後にエア抜きをしてポンプやバルブの動作を点検してから本投入する、という手順を踏んでいます1。エラーが出てから全量を抜く手間を防ぐ、理にかなった順番です。

アームのロックやバッテリーの装着は、別の人が行った場合でも操縦者自身が最終確認する。狭い圃場や電線をくぐる場面では手動で離陸させてから自動散布に切り替える。自動航行中もいつでも介入できるようスティックに指を添えておく――こうした基本動作が、事故を遠ざけます1。複数圃場を続けて自動で回るマルチタスク機能では、圃場を出た機体が家屋や電柱に向かわないか事前確認が必要とされる点も、覚えておきたいポイントです1

ドローンが身近になるほど、ラベル確認の重みが増す

農業用ドローンは着実に普及の裾野を広げています。国産機ではホームセンターでの取り扱いが始まり、従来10aあたり約1時間かかっていた散布作業が約1分に短縮できるといった省力効果が示されています2。手に入れやすくなること自体は歓迎すべき流れですが、それは同時に、初めて散布に取り組む人が増えることも意味します。

機体の操作は覚えられても、農薬の登録や希釈といった「撒く前の知識」は現場ごとに調べ、判断する力が求められます。直播と移植の違いはその代表例と言えるでしょう。

まとめ

ドローン散布の成否は、飛行技術だけでなく「ラベルを正しく読む力」に支えられています。混合剤を自作で代用しない、直播と移植で数字が変わることを前提にする、少量投入とエア抜きで装置を点検する――こうした地道な確認が、効果と安全の両方を守ります。西濃ドローンアカデミーでも、機体操作と合わせて農薬の適正使用や現場での確認手順を重視しています。飛ばす前の一手間を身につけたい方は、実技を通じて基本を固めていきましょう。

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