水稲の追肥はいつ?ドローン×AIで移植・直播を見える化する

「追肥のタイミングをもう少し早く判断できていれば」「窒素はどれくらい足すべきか、毎年迷う」——稲作の現場では、こうした判断がベテランの経験と勘に委ねられがちです。この属人的な判断を、ドローンで撮った画像とAIの分析で「数値」に置き換えようとする動きが出てきました。狙いはシンプルで、追肥の時期や窒素の施用量を、勘ではなくデータで事前に見通せるようにすることです2。
この記事では、ドローン×AIによる生育診断が水稲の意思決定をどう変えうるのか、そして防除・散布の場面でも共通する「記録の精度」という論点を、実務目線で整理します。
稲作は「1年に1度しか試せない」から難しい
水稲づくりの難しさは、栽培のサイクルにあります。田植えから収穫まで年1作が基本のため、ある方法を試して結果が出るのは1年後。改善のチャンスが年に一度しか巡ってこない業種だ、という指摘があります2。
これは、経験の蓄積に時間がかかることを意味します。ベテランの「勘」は、この長いサイクルを何十回も回して身につけたものです。裏を返せば、新規就農者や世代交代の場面では、その勘をゼロから積み直すのに膨大な年数がかかってしまう。ここに、データで判断を補う仕組みの価値があると筆者は考えます。
移植・乾田直播・湛水直播を「同じ条件」で比べる
注目したいのは、ある共同研究で行われた比較の設計です。従来のこの種の研究は、1〜2枚の圃場だけを対象にすることが多かったのに対し、今回は同じ地域・同じ条件・同じ品種で、植え方だけを変えた3つの圃場を並べて比べる点に特徴があります2。
比較したのは次の3パターンです2。
- 移植(従来の田植え・慣行栽培)
- 乾田直播(トラクターで乾いた田に直接播種)
- ドローンによるばら撒きの湛水直播(水を張った田に上から播く)
「直播(ちょくは)」とは、苗を育てて植える移植と違い、種もみを田に直接播く方法です。育苗の手間が省ける一方、発芽のばらつきや雑草の管理が難しくなります。条件をそろえて3方式を横並びにできれば、「どの方式が、どの場面で有利か」を比べやすくなる。前例が少ない取り組みだからこそ、現場が判断に使える材料になり得ると感じます2。
直播の弱点をAIで「見える化」する
直播で特に課題になるのが、発芽不良と雑草です2。苗が均一に立たない、雑草に負けてしまう——こうした問題は、目で見て気づいた頃には手遅れ、ということも少なくありません。
そこで、学生が集めた画像をAIに学習させ、人が判断を下す前にAIが生育状態を分析する仕組みが検討されています。追肥のタイミングや窒素の施用量を事前に可視化できれば、収量と品質を保ちながら直播の弱点を補える、という発想です2。
ポイントは、AIが人に取って代わるのではなく、「勘に頼らず、誰がやっても同じ結果を出せる」判断の土台をつくることにあります2。経験の浅い担い手でも一定の水準で判断できるようになれば、担い手不足に悩む地域にとって現実的な支えになります。
散布・防除でも「記録の精度」が判断を左右する
データで判断する農業を目指すうえで、見落とせないのが「そもそもの記録が正確か」という問題です。これは生育診断だけでなく、農薬散布の現場にも共通します。
たとえば大型散布ドローンでの防除では、薬液を投入する際に泡立ちが起き、重量計が狂って「60L入れたつもりが飛行時には約50Lになっていた」という記録のずれが報告されています。これに対しては消泡剤の使用が有効だったといいます1。撒いた量が正しく記録されていなければ、後から効果を検証しても正しい結論は導けません。
また、薬剤の性質を理解した判断も重要です。浸透移行性(植物体内に取り込まれて効く)の殺菌剤なら、葉裏に直接かからなくても効果が期待できるため、必ずしも隅々まで濡らす必要はない、という考え方も現場で語られています1。「たくさん撒けば安心」ではなく、薬剤の特性と記録に基づいて散布量を判断する。これも、勘からデータへの転換の一つの形だと思います。
まとめ:勘を「引き継げる形」に変える
ドローンとAIによる生育診断、そして散布記録の精度向上に共通するのは、ベテランの頭の中にある判断基準を、数値として見える化し、次の世代へ引き継げる形にしようという方向性です。稲作のように試行回数が限られる分野では、この「見える化」がとりわけ大きな意味を持ちます。
もっとも、こうした仕組みを現場で回すには、機体を安全に飛ばし、正確なデータを取得できる基本の操縦技術が前提になります。西濃ドローンアカデミーでは、農業現場での活用を見据えた実技と知識の習得をサポートしています。「データで判断する農業」への第一歩として、まずは確かな操縦の土台づくりから始めてみてはいかがでしょうか。
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