小型無人機等飛行禁止法の改正で飛行禁止が1000mに|飛行前確認の注意点

「前回は問題なく飛ばせた場所が、今は飛行禁止になっていた」——これが2026年の改正で現実に起こり得る事態です。結論から言えば、重要施設のまわりで飛ばせない範囲が大きく広がり、しかも知らずに飛ばしただけで罰せられる仕組みになりました。反復して同じ現場に入る事業者ほど、飛行前の再確認をルーティンに組み込む必要があります。
この記事では、何がどう変わったのか、そしてなぜ「飛行前の確認」が以前より難しくなっているのかを、現場目線で整理します。
何が変わったのか:禁止範囲の拡大と「直罰化」
小型無人機等飛行禁止法(正式には重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律)の改正法が、2026年7月14日から施行されました21。ポイントは大きく二つです。
一つ目は、飛行が禁じられる「イエローゾーン」の拡大です。従来は対象施設の周囲おおむね300メートルでしたが、これがおおむね1,000メートルへ広げられました。面積で単純計算すると約11倍にあたります2。重要施設が集中する東京都心では、山手線の内側のかなりの部分が該当することになり、影響は小さくありません2。
二つ目は、罰則の強化、いわゆる「直罰化」です。改正前は、イエローゾーンで飛ばしても、警察官の退去命令などに従わなかった場合に初めて罰則の対象でした。つまり是正のチャンスがあったわけです。改正後は、イエローゾーン上空で飛ばした行為そのものが処罰対象になります。法定刑は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です2。
ここで実務者が特に注意したいのは、この法律が航空法とは別の枠組みだという点です。航空法は国土交通省、この法律は警察庁が所管しており、目的も規制の考え方も異なります2。したがって、航空法の許可・承認を取っていても、この法律への対応は別途必要になります2。さらに、航空法では対象外となる100グラム未満の軽量な機体でも、この法律の規制は及びます2。「小さいから大丈夫」という感覚は通用しません。
なぜ今、範囲を広げたのか
背景には、ドローン性能の向上があります。もともと周囲300メートルという設定は、法律ができた当時、市街地での映像伝送距離が200〜300メートル程度だったことに基づいていました。操縦者が施設境界から300メートル以内にいる可能性が高い、という前提で警察官が発見・対処できるよう設計されていたのです2。
ところが近年は映像伝送距離が大きく伸び、外側から施設上空へ飛ばすことが容易になりました。時速150キロメートルで飛べる機体も現れ、対処に必要な時間を確保する観点から、範囲が1,000メートルへ広げられたとされています2。直罰化についても、機体の積載能力が上がり、外側からでも攻撃が可能になり得ることが背景にあると説明されています2。
一方で、この法律違反の検挙件数は、2016年4月の施行から2024年末までの約8年半で21件にとどまります2。件数だけ見れば少ないものの、範囲拡大と直罰化が重なったことで、事業者側のリスクの性質が変わったと考えるべきでしょう。所管が警察庁であるため、現場での違反判断に他省庁への照会が原則不要で、取締りが迅速に行われやすくなった点も見逃せません2。
「反復飛行」の現場ほど危ない
筆者が最も注意を促したいのは、定期点検や繰り返しの空撮のように、同じ場所へ何度も入る業務です。以前は問題なく飛ばせた現場が、改正後は禁止エリアに含まれている、という事態が現実に起こり得るからです2。
これは机上の話ではありません。あるコラム執筆者は、実家の近くに自衛隊の駐屯地があり、帰省のたびに飛ばしていた場所が、改正でおおむね1,000メートルの禁止範囲に入っていたことを、アプリを自作する過程で初めて知ったと述べています1。制度は変わっても、それを一人ひとりが自動的に把握できるわけではない——ここに落とし穴があります。
だからこそ、既存・新規を問わず飛行予定地が拡大後のイエローゾーンに入らないかを改めて確認すること、そして施設管理者の同意取得や公安委員会への通報といった手続きの要否を案件ごとにチェックする運用を整えることが求められます2。飛行が例外的に認められるのは、施設管理者や土地所有者等の同意を得た場合などに限られ、その際も周辺地域上空の飛行には事前通報が必要です2。
「飛行前確認」はまだ機械任せにできない
もう一つ考えたいのが、確認作業そのものの難しさです。人口集中地区のように、国土交通省が国勢調査に基づき公式配布しているデータであれば、自分の位置が該当するかをプログラムで判定できます1。しかし、確認すべき項目のすべてが、そうした「機械が読める」形で揃っているわけではありません。
象徴的なのが緊急用務空域です。災害時に消火・救助のヘリが飛ぶために指定される空域で、飛行前に必ず確認しなければならない最重要項目の一つですが3、これをプログラムから問い合わせる公式の窓口がなく、航空局のホームページで人間が読む前提の告知として公示されます1。災害時には日単位で変わるため、事前にコピーを持っておくことも難しいのが実情です1。国土交通省も、飛行前に緊急用務空域の指定の有無を必ず事前確認するよう求めています3。
今回取り上げた飛行禁止法の対象施設や、自治体の条例、私有地の権利なども、一つのアプリで一括判定するのは容易ではありません1。つまり、飛行前確認は複数の情報源を突き合わせる作業であり、当面は人の手による確認が欠かせないということです。前掲のコラム執筆者も、有料の確認アプリで位置を確認してスクリーンショットを残したうえで、補助的な自作ツールを併用する「二刀流」を実践していると述べています1。記録を残す習慣は、後から「確認していた」ことを示すうえでも有効でしょう。
なお、災害時には特例措置が設けられることもあります。令和8年熊本地震では、特定被災地域内に住所を有する人について、技能証明・機体認証の有効期間や機体登録の有効期間を令和9年1月27日まで延長・伸長する弾力的措置が講じられました3。制度は固定的なものではなく、状況に応じて更新される点も、日頃から公表情報を追う理由になります。
まとめ:確認を「習慣」にすることが最大の防御
今回の改正は、禁止範囲の拡大と直罰化という二つの変更で、飛行前確認の重みを一段引き上げました。とりわけ反復飛行の現場では、「前も飛ばせたから」という判断が通用しなくなっています。そして緊急用務空域のように、機械任せにできない確認項目が残っている以上、地理院地図やDIPS2.0を使った確認を飛行前フローに組み込み、社内マニュアルや教育資料を最新の内容に更新しておくことが現実的な対策になります2。
制度改正やルールの背景を体系的に学んでおくことは、こうした確認を確実にこなす土台になります。ドローンの国家資格取得をお考えの方は、西濃ドローンアカデミー(https://license.seino-drone.com?utm_source=blog&utm_medium=organic)の講座情報もあわせてご覧ください。
情報リソース
- DRONE.jp/「ここで飛ばしていいのか」をメガネに出す─作ってみたら、自分が緑信号を出していた [田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.68 — 取得日: 2026-09-25
- DRONE JOURNAL(Impress)/Vol.8 小型無人機等飛行禁止法の改正―飛行禁止区域の拡大と直罰化がドローン事業に与えるインパクト — 取得日: 2026-09-25
- 国土交通省 航空局(無人航空機)/無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール — 取得日: 2026-09-25
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