コンクリート内部の鉄筋腐食をドローンで診断|加振レーダ非破壊点検とは

橋やトンネルの点検というと、これまでは「表面を目で見る」「ハンマーで叩いて音を聞く」といった手法が中心でした。しかし、本当に知りたいのは外から見えないコンクリートの“内側”――鉄筋がどれだけ錆びているか、です。この見えない部分を、足場を組まずドローンや壁面ロボットで非破壊計測しようという開発が始まりました1。本記事では、その仕組みと、点検業務がどう変わりそうかを実務目線で整理します。
「表面点検」では分からないことがある
ドローン点検はここ数年で一気に普及しましたが、主役はあくまで可視光カメラや赤外線(サーマル)による“表面情報”の取得でした。ひび割れの位置、浮き、温度分布などは分かっても、コンクリートの内部でじわじわ進む鉄筋の腐食は、外からでは定量的につかみにくいのが実情です。
この課題は、単なる技術の話にとどまりません。橋梁やトンネル、擁壁といった社会インフラは全国的に老朽化が進む一方、点検や維持管理を担う人材の不足が深刻になっています1。従来のように足場を設置したり高所作業車を手配したりすれば、費用も作業期間もかさみ、高所作業の安全リスクも伴います1。「見える範囲をいかに効率よく撮るか」から、「見えない内部をどう早く・安全に診断するか」へと、点検の重心が移りつつあると言えるでしょう。
「加振レーダ」とは何か
今回注目したいのが、2026年9月17日にアイ・ロボティクスが発表した取り組みです。同社はカワナベ工業、群馬大学と共同で、高所コンクリート構造物の内部鉄筋を非破壊で診断する工法を提案し、群馬県の「令和8年度ぐんま未来共創トライアル補助金」に採択されました1。
核になるのが、群馬大学が開発する「加振レーダ」という鉄筋腐食の診断技術です。やや専門的ですが、仕組みはシンプルに言うと次の通りです。電磁石でコンクリート内部の鉄筋をごくわずかに振動させ、その動き(変位)をドップラーレーダで非接触のまま計測する、というものです1。腐食の程度によって鉄筋の振動の仕方が変わることを利用して、内部の状態を推し量るわけです。
この加振レーダ装置を、アイ・ロボティクスの壁面移動ロボットやドローンに搭載し、構造物の表面に安定して接触させながら移動・計測するシステムを開発する計画です1。空を飛ぶだけでなく「壁に接触して計測する」という発想は、近接作業を前提とする点検ドローンの延長線上にあると言えます。
「鉄筋健全度マップ」で優先順位をつける
もう一つ実務的に重要なのが、計測して終わりではない、という点です。取得したデータから内部鉄筋の腐食状態を可視化した「鉄筋健全度マップ」を生成し、点検や補修の優先順位を判断する材料にする構想が示されています1。
限られた予算と人員でインフラを守るには、「どこから直すか」を合理的に決める根拠が欠かせません。内部の腐食状態が面として見えるようになれば、勘や経験に頼りがちだった補修判断を、データで裏づけられるようになります。これは、ドローンで撮った点群や画像を「誰でも分かるデータ」に変えていく流れとも通じる考え方です。
2026年度は群馬県内の橋梁などで現場実証を行い、計測精度、移動・接触性能、安全性、作業時間といった実用上のポイントを検証する予定とされています1。将来的には橋梁や擁壁だけでなく、上下水道施設、高速道路、鉄道、港湾、プラント設備などへ適用範囲を広げることが見込まれています1。
まとめ:点検は「撮る」から「診断する」へ
まだ実証段階の技術であり、精度や現場適性はこれから検証される段階です。ただ、表面を撮影する点検から、内部を非破壊で診断する点検へ――という方向性は、人材不足と老朽化という二つの課題に同時に向き合う、現実的な一手だと筆者は考えます。ドローンの役割も「空から撮る道具」から「構造物に接触して測る道具」へと、着実に広がりつつあります。
こうした点検の高度化を担うには、機体を安全に飛ばし、近接作業をこなす操縦技能と制度知識が土台になります。ドローンの国家資格取得をお考えの方は、西濃ドローンアカデミー(https://license.seino-drone.com?utm_source=blog&utm_medium=organic)の講座情報もあわせてご覧ください。
情報リソース
- DRONE JOURNAL(Impress)/アイ・ロボティクスら、レーダーでコンクリート内部劣化を診断するドローン・ロボット点検工法を開発 — 取得日: 2026-10-03
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