災害時にドローンで被災地を映すには?能登の報道実証と緊急用務空域の注意点
災害が起きたとき、ドローンで被災地の様子を空から撮りたい——そう考える実務者は少なくありません。結論から言えば、いまの災害時空撮は「常設の無人ポート+遠隔運航」で急速に高速化しており、制度対応を済ませた事業者が担う方向に進んでいます。一方で、個人が思いつきで飛ばすことは救助ヘリの妨げになりかねず、まず確認すべきルールがあります。本記事では、最近の報道・配送の実証から災害時ドローンの現在地を整理し、現場で何に注意すべきかを編集部の視点でまとめます。
能登の実証が示した「15分で空から中継」
2026年10月7日、テレビ朝日とKDDI、KDDIスマートドローンの3社が、石川県能登地域(七尾市・珠洲市・能登町・志賀町)に設置した常設ドローンポートを使い、災害報道の実証を行いました3。大規模地震の発災直後を想定したもので、現地に置かれた「Skydio Dock for X10」から機体を飛ばし、上空からの映像を東京のテレビ朝日本社までリアルタイムで送った、という内容です3。
注目したいのは、離陸までに要した時間が約15分だった点です3。発災直後にヘリや取材車を向かわせる従来の方法に比べ、あらかじめ現地に機体を常駐させておけば、人が現場に到達する前に空からの一次情報を得られます。この取り組みは2025年12月から続いているもので、送られた映像はテレビ朝日独自の受信システムを経て副調整室に取り込まれ、そのまま番組制作に回せることも確認されました3。「撮って終わり」ではなく、放送という最終出口まで一気通貫で検証した点に、報道実務の本気度がうかがえます。
「少人数で多数機」が災害報道を変える
もう一つ見逃せないのが運用体制です。この実証では、東京にいるオペレーター2人が4機のドローンを同時に動かし、広い範囲を効率よく撮影しました3。現地に人を張り付けなくても、遠隔から複数機をさばける——これは人手が限られる発災直後ほど効いてきます。
飛ばし方にも工夫があります。ポートの真上にとどまる定点飛行と、事前に設定したルートを回る広域飛行を組み合わせることで、「全体の状況をまず把握し、次に気になる場所を詳しく見る」という段取りが一台のシステムで完結します3。これは災害対応だけでなく、平常時のインフラ監視にも応用が利く考え方で、ドローンを「人の目の延長」として設計段階から運用に落とし込んでいる好例だと感じます。
こうした遠隔・多数機運用が成り立つ背景には、上空での安定した通信があります。モバイル通信を活かした目視外飛行の支援や全国へのポート配備、遠隔運航による災害時の状況把握など、通信事業者側の地道な社会実装の積み重ねが土台になっています1。機体の性能だけでなく、通信と制度対応がそろって初めて「災害時に本当に飛ぶ」仕組みになる、という点は実務者が押さえておきたいところです。
報道だけでない——配送・水域へ広がる災害時ドローン
空からの情報収集と並行して、「物を届ける」側の整備も進んでいます。KDDIは、住宅への配達実績が100万件を超えるとされる配送企業Wing、そしてKDDIスマートドローンと提携し、2027年中に一部エリアで食料品や日用品の配送開始を目指しています1。主眼は買い物困難者支援や物流効率化ですが、各社は災害時の配送手段確保も価値の一つに挙げています1。平常時の生活インフラとして回しておけば、いざというとき医薬品や物資を運ぶ経路としても機能しうる、という発想です。
対象は空だけにとどまりません。無線・遠隔制御技術を手がける双葉電子工業は、2026年10月23日に国産水上ドローン(USV)を開発する炎重工をグループ化(株式取得割合91.9%)すると発表しました2。河川や港湾、ダムといった水域の点検・監視ニーズを見据えたもので、災害時には空中ドローンで被災状況を素早くつかみ、水上ドローンで現場を確認する——という空と水を組み合わせた情報収集を構想しています2。被災地の把握が、地上・上空・水域の多面的なデータで立体的に進む時代が近づいています。
現場が最優先すべき「緊急用務空域」と有人機
ここまで読むと「自分も災害時に飛ばしてみよう」と思うかもしれません。しかし、だからこそ強調したいのが安全と法令です。国土交通省は、災害などが起きている地域では捜索・救難のための有人機(ヘリコプターなど)が飛ぶ可能性があるため、その活動の妨げにならないようドローンの飛行は控えるべきだと示しています4。
さらに、有人機の安全を守るために「緊急用務空域」が指定された場合、その空域ではドローンの飛行は禁止されます4。この指定は発災後に出されることがあるため、飛ばす前に必ず指定の有無を確認する必要があります4。周囲の気象や地形をよく見て、補助者を付けて助言を受けるなど、自分の安全確保にも注意するよう求められています4。
つまり、能登の実証のような災害報道が成立するのは、通信・制度対応・運航体制を整えた事業者が、有人機との役割分担を前提に飛ばしているからです。善意であっても個人が無断で飛ばせば、救助活動そのものを危険にさらしかねません。災害時こそ「誰が、どの空域を、どう使うか」という調整が命綱になる、という点を、取得を検討する方にはぜひ心に留めてほしいと思います。
まとめ
常設ポートと遠隔運航により、災害時の空撮は「発災からわずかな時間で中継」できる段階に入りました。報道、配送、水域監視と活用の幅は広がり、災害対応のインフラとしてドローンが根付きつつあります。同時に、その現場は有人機との協調や緊急用務空域といったルールの上に成り立っていることも忘れてはなりません。飛ばす技術と同じくらい、「飛ばさない判断」や事前確認の習慣が問われる領域だといえます。
ドローンの国家資格取得をお考えの方は、こうした災害時の運用ルールや安全確認も含めて学べる西濃ドローンアカデミー(https://license.seino-drone.com?utm_source=blog&utm_medium=organic)の講座情報もぜひご覧ください。
情報リソース
- DRONE.jp/KDDIとWing、国内のドローン配送実現に向け提携。食料品や日用品の2027年配送開始を目指す — 取得日: 2026-10-28
- DRONE JOURNAL(Impress)/双葉電子工業、水上ドローン開発の炎重工をグループ会社化 — 取得日: 2026-10-28
- DRONE JOURNAL(Impress)/テレビ朝日とKDDI、常設ドローンポート活用で迅速な災害情報伝達を検証 — 取得日: 2026-10-28
- 国土交通省 航空局(無人航空機)/無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール — 取得日: 2026-10-28
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