SORA 2.5と3.0とは?ドローン運航リスク評価の国際標準はこう変わる

「カテゴリーIII飛行やレベル4の申請で出てくる『SORA』って、結局なにを評価する仕組み?」——これは、補助者なし目視外飛行などリスクの高い運航を計画する実務者からよく聞く疑問です。結論から言えば、SORAはドローンの運航内容と環境から地上・空中のリスクを見積もり、そのリスクに応じて機体や運航者に必要な安全対策を導く「考え方の枠組み」です1。いま現場で使われているのは2024年公開の「SORA 2.5」で、次の「SORA 3.0」の策定が進んでいます1。本記事では、申請実務に関わる人の視点で、何が整理され、これから何が変わろうとしているのかを整理します。
そもそもSORAと「JARUS」とは
SORA(Specific Operations Risk Assessment)は、特定の運航に対してリスクを評価する方法論です。これを策定しているのが、無人航空機を既存の航空システムへ安全に組み込むための国際的な枠組み「JARUS(Joint Authorities for Rulemaking on Unmanned Systems)」です1。2007年に発足し、2026年時点で70を超える航空当局や機関が参加しています1。
大事なのは、JARUS自体が各国を直接縛る規則をつくるわけではない、という点です。あくまで各国の航空当局が自国の制度を整える際に使える「共通の方法論」を提供し、国ごとの制度がバラバラにならないよう調和を図る役割を担っています1。実務を動かすのはワーキンググループで、安全リスク管理を扱うWG-SRM、機体の耐空性を扱うWG-AW、運航・組織・要員を扱うWG-OOPなどが活動しています1。2026年5月には、このSORAを担当するWG-SRMの会合が東京・日本橋で開かれました1。国際標準の議論の場が日本で持たれたこと自体、国内の運航環境にとって無関係ではない動きだと筆者は受け止めています。
SORA 2.5で「整理された」ポイント
SORA 2.5は、前版(2.0)をゼロから作り直したものではなく、手順や地上リスク評価、安全目標の記述を使いやすく整理した改訂版です1。申請者と当局の双方が読みやすくなるよう、文書構造でも「要求事項(Requirements)」と「参考情報(Guidance)」を明確に分けています1。
実務で影響が大きい変更を、いくつか具体的に挙げます。
- リスク評価の手順が11ステップから10ステップへ簡素化され、飛行範囲から逸脱するリスクへの対策(Containment)の評価が前倒しされました1。
- 地上リスク(GRC=Ground Risk Class)の算定に、人口密度・機体速度・事故時の影響面積(Critical Area)を使う定量的な方法が導入されました1。
- 250g以下かつ速度25m/s以下の小型機は、一定条件で最も低いGRC 1として扱える仕組みが盛り込まれました1。
- 緊急時対応計画(ERP)が、従来の緩和策の位置づけから、必須の運航安全目標(OSO:Operational Safety Objective)へ格上げされました1。
- そのOSO自体も、24項目から17項目へ統合・整理され、誰が責任を負うか(運航者・製造者・訓練機関)が明示されました1。
「小型機は低リスク扱いしやすい」「緊急時対応は後回しにせず必須」という方向性は、現場感覚とも合います。誰が何に責任を持つかが明示された点は、複数事業者が関わる運航で特に効いてくる改善だと感じます。
SORA 3.0の焦点は「エアリスク」の見直し
一方で、SORA 2.5では有人航空機との衝突リスクを扱う「エアリスク」には大きな手が入りませんでした1。この本格的な再構築が、次のSORA 3.0に持ち越されています1。東京会合でも、このエアリスクの見直しが大きな焦点になっていると報告されています1。
なぜここが重要か。地上リスクは「落ちたとき地上の人にどれだけ危険か」を評価しますが、エアリスクは「空でヘリコプターなどの有人機とどれだけ鉢合わせしやすいか」を評価する部分です。日本でも、災害時には捜索・救難の有人機が飛ぶ可能性があり、緊急用務空域が指定されればドローンの飛行は禁止されます3。有人機と無人機が同じ空域を共有する前提で制度を組む必要性は、今後ますます高まります。エアリスクの評価がどう整理されるかは、目視外・長距離運航の許可のしやすさに直結するテーマです。
国際標準は「国内制度」とどうつながるか
JARUSが作る方法論は、各国当局が採用して初めて効力を持ちます。実際、EASA(欧州航空安全機関)は2025年9月29日に決定文書「ED Decision 2025/018/R」を発行し、SORA 2.5を欧州の「Specific」カテゴリーにおける適合性を示す手段(AMC)の一つとして正式に取り入れました1。国際標準が、地域の実際の運用ルールへ落とし込まれていく流れです。
日本でも、2015年の航空法改正から制度整備が進み、2022年には国家ライセンス制度が始まりました2。レベル4飛行(有人地帯上空での補助者なし目視外飛行)の拡大や機体認証制度の整備など、制度は節目を迎えています2。こうした国内の議論と国際標準の動向は切り離せません。SORAの版が上がれば、将来の審査要領やガイドラインの考え方にも影響し得ます。目視外や長距離の運航を事業計画に据える実務者にとって、「いま使う2.5の中身」と「次に来る3.0の方向性」の両方を押さえておく価値は十分あります。
まとめ
SORAは、ドローンのリスクを評価して必要な安全対策を導く国際的な方法論で、現行は2.5、次世代の3.0ではエアリスクの再構築が焦点になっています1。小型機の扱いやOSOの整理、責任主体の明確化など、2.5の変更は実務の見通しを良くする方向にあります1。制度は国内外で連動して動くため、申請を担う立場ほど早めに流れをつかんでおくと、計画の手戻りを減らせるはずです。
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情報リソース
- DRONE JOURNAL(Impress)/Vol.15 SORA 3.0策定が本格化、JARUS東京会合で進む「エアリスク」再構築 — 取得日: 2026-10-07
- DroneMedia/【参加無料】12月10日京都開催|ドローン行政・防災・産業の未来がわかる大型シンポジウム | DRONE MEDIA — 取得日: 2026-10-07
- 国土交通省 航空局(無人航空機)/無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール — 取得日: 2026-10-07
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