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ドローンの打音点検・高所清掃は実用化する?神奈川県の実証支援を読む

「ドローンは空から見るだけの道具」という時代が、静かに終わりつつあります。結論から言えば、いま各地の自治体が後押ししているのは、空撮や目視点検にとどまらず、壁を叩いて内部の劣化を調べたり、高所を洗浄したりといった「触れて、作業する」ドローンです。実際、神奈川県は県内でのドローン実用化を促す公募で開発・実証プロジェクト4件を採択し、専門家の助言や費用補助で事業化を支援すると発表しました1

この記事では、こうした自治体の実証支援の中身と、新しい用途に共通する「安全」の課題を、これから事業として関わりたい実務者の目線で整理します。

自治体が後押しする「作業するドローン」

神奈川県の公募には29件の応募があり、安全性や公益性、事業化の見込み、県内企業・大学との連携などを基準に審査した結果、開発2件・実証2件が選ばれました1。採択されたのは、電線などとの衝突を避ける自律飛行技術の開発、打音点検を省人化する吊り下げ式の壁面吸着ドローン、反力を抑えるユニットを積んだ高所清掃の実証、そしてドローンポートを使った消防の通報初動対応の実証です1

注目したいのは、いずれも「見る」だけでは終わらない点です。打音点検は壁を叩いた音でコンクリート内部の浮きや劣化を判断する作業で、これまで足場や高所作業が前提でした。高所清掃も同様に、人が危険な場所に登る必要がありました。こうした「人がやると危ない・手間がかかる作業」をドローンに任せる方向に、支援の焦点が移っているのだと私は受け止めています。

費用面では、開発プロジェクト1件あたり最大1,200万円、実証プロジェクト1件あたり最大800万円が支援されます1。金額の大小よりも、自治体が「実証の場」と「専門家の助言」を用意してくれること自体が、参入を考える事業者にとって大きな意味を持ちます。技術はあっても、飛ばせる現場と信用の裏付けがないと事業は前に進みにくいからです。

「作業する」ほど問われる安全設計

用途が作業へ広がるほど、避けて通れないのが安全の担保です。特に屋内やタンク内部のような、GPSが届かず電波も遮られやすい環境では、通信が途切れた瞬間に機体を見失うリスクが高まります。

この課題への一つの回答が、Terra Droneが屋内点検機「Terra Xross 1」に実装した「シグナルリカバリー機能(通信復旧帰還)」です2。飛行中にコントローラーとの通信が途絶えると自動で作動し、機体はそれまで飛んできた経路を逆にたどって戻りながら、信号の再接続を試みます2。この機能は日本財団とDeepStarの共同開発プログラムの一環で、ChevronやShellといった参画企業の実運用フィードバックを反映して作られました2。貯蔵タンクやボイラー室、地下構造物など、電波が届きにくい現場での機体喪失を減らすことがねらいです2

ここから読み取れるのは、「うまく飛ぶ」ことと同じくらい「異常時に安全な状態へ戻れる」ことが重視され始めている、という流れです。作業を任せる相手だからこそ、失敗したときにどう振る舞うかが問われるわけです。

安全は「一つの技術」では完成しない

では、安全機能を一つ積めば十分かというと、そう単純ではありません。ドローンのように現実世界を動く機械は、センサーで周囲を認識し、機体を制御し、通信でデータをやり取りし、異常時にはフェールセーフで安全な状態へ移行する——という循環を絶えず繰り返しています3。AIによる判断はその一部にすぎず、判断が制御に伝わらなければ意味がなく、通信が途切れれば遠隔運用はできず、センサーが誤れば判断も狂います3

つまり、センサー・通信・制御・安全機構・人間までを一つの時間軸の中で協調させる設計思想が欠かせない、という指摘です3。壁面吸着や高所清掃のように反力(作業時の反発力)と向き合う機体では、この「全体をそろえる」発想がいっそう重要になると考えられます。単体の性能表よりも、システムとしての整合性を見る目が、これからの実務者には求められるはずです。

制度と市場の動きも合わせて押さえる

新しい用途を事業に育てるには、技術だけでなく制度や市場の流れも把握しておきたいところです。航空法改正から10年を迎え、2022年12月に始まった国家ライセンス制度や、有人地帯上空での補助者なし目視外飛行(レベル4)の拡大、機体認証・型式認証の整備が進んでいます4。市場規模は3,000億円を超え、2028年には9,000億円に達するとの予測も示されています4

こうした動向は、京都で開かれるような業界シンポジウムなど、国土交通省や指定試験機関の担当者から直接情報を得られる場でも共有されています4。点検や清掃、防災といった分野で事業化を狙うなら、制度の方向性を早めに知っておくことが、無駄のない準備につながります。

まとめ

ドローンの用途は、空撮や目視点検から「触れて作業する」領域へと着実に広がっています。神奈川県の実証支援が示すように、打音点検・高所清掃・消防初動といった現場のニーズに、自治体も費用と場を用意し始めました1。同時に、通信途絶時の自動帰還のような安全機能2や、システム全体を協調させる設計思想3の重要性も増しています。

新しい用途に挑むほど、操縦の腕だけでなく、安全に配慮した運用の考え方が土台になります。西濃ドローンアカデミーでは、国家資格の取得を通じて、こうした「安全に飛ばし、安全に戻す」基礎を実務目線で学べます。これから点検や作業分野への参入を考える方にとって、確かな一歩になれば幸いです。

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