農業にAIは使える?Gemini活用の実例と「任せきれない判断」

「AIや自動化の技術を入れれば、農業はもっとラクになるのでは?」——スマート農業に関心のある方なら、一度は考えることだと思います。結論から言えば、AIや自動化はすでに農業現場の一部で実用段階に入っています。ただし、使える範囲は限定的で、作付けの段取りや薬剤の選び方といった「最終的な判断」はいまも人が担っているのが実情です。今回は、多品目栽培の農家やドローン防除・自動草刈りの現場から、AI・自動化を「どこまで任せ、どこは任せないか」を具体例で整理します。
農家がAIで何をしているのか──多品目農園の実例
まず注目したいのが、年間を通じて季節の野菜を約70品種栽培し、品種や作型まで数えると年間およそ200種類を扱う農園の取り組みです1。販売は個人客向けのお任せボックス(サブスク型)が中心で、顧客は約350件、年間売上は約5,000万円、その9割以上が個人客という構成だといいます1。
この農園では、ベテランが頭の中に持っている暗黙知を言葉にするためにAIを使っています。具体的には、対話型AIのGeminiと「壁打ち」しながら種の選定を進め、その作業だけで約2週間を費やしたとのことです1。また、土壌分析や肥料設計については、参考にすべき書籍を選んで資料読み込み型AIのNotebookLM(手持ちの文書をもとに回答するAIツール)に読ませ、質問すれば適切な答えが返る仕組みを部分的に構築したといいます1。
興味深いのは、ここで「AIにできること」と「できないこと」がはっきり分かれている点です。種子選定や肥料設計のように、根拠となる知識を整理すれば答えを出せる作業はAIと相性が良い一方、全体の段取りや品目ごとの優先順位づけ、作り手の好みに関わる判断は現状AI化が難しく、一部のパーツにとどまっているとされます1。毎日のように何かを播種し、シーズンによっては最大30品種前後を同時並行で扱う現場では、この「段取りの判断」こそが経営の核心なのです1。
自動化を「過信しない」という現場感覚
ドローンによる農薬散布の現場でも、似た構図が見られます。ある受託作業事業者が、みかん園で大型散布ドローン「DJI AGRAS T70P」を使って防除を行った事例では、機体のレーダーやビジョンセンサーが向上し障害物回避が働く一方で、ナビゲーション側が「回避性能を過信しすぎる懸念」も指摘されています2。果樹園は家屋や樹木、電線に反応しやすく、境界からの内側オフセット(内縮)を当初の2mから3〜4mへ広げるといった現場での微調整が必要になったといいます2。自動で賢く避けてくれるからといって、設定をそのまま任せきりにはできないということです。
薬剤の扱いも同様です。水稲では葉の裏への付着(かかり具合)を重視しますが、農薬によっては高濃度・浸透移行性(植物が薬を吸収して全体に行き渡る性質)の場合、むしろ早く乾いた方が良いケースもあり、作物と薬剤によって考え方が変わると整理されています2。つまり「正解」は一つではなく、条件を読んで選ぶ人の判断が欠かせません。
さらに制度面の壁もあります。果樹向けは航空散布に使える農薬の登録が少なく、特に殺虫剤は選択肢が限られるため、現状では年間防除のうちドローンに置き換えられるのは2回程度という見立ても語られています2。技術が進んでも、使える薬剤の登録状況という「外側の条件」に運用が左右される点は、導入前に知っておきたいところです。
電動・自動の草刈りでも残る「コストと監督」の課題
省力化が進むのはドローンだけではありません。自動草刈りロボット「Taurus80E(第二世代)」は、環境省「農業機械の電動化促進事業」の補助金交付対象として正式登録され、一定の条件を満たす導入者は補助制度を使って導入できるようになりました3。GNSS・RTKを活用した自動走行に対応し、刈幅800mm、最大約5時間の連続稼働で、法面や傾斜地など負担の大きい現場での活用が想定されています3。
ただし、自動化・電動化された農機は従来機に比べて導入コストが高くなりやすく、普及には導入時の負担軽減が課題だとされています3。補助金はその負担を下げる有力な選択肢ですが、申請・審査・交付決定が前提であり、制度の条件は年度によって変わる点にも注意が必要です3。機械を入れること自体がゴールではなく、どう現場に定着させ、誰が運用・監督するかまで含めて考える必要があります。
「飛びつかない」ことが、結果的に近道になる
これらの事例に共通するのは、「便利な道具を入れれば解決」ではないという冷静な視点です。多品目農園の取り組みを紹介した対談では、特定の道具や手法への過度な囲い込みは危険であり、湛水直播のような手法が常に最適とは限らず条件によって変わること、そして「考える農家」を育てる必要性が語られています1。科学的な裏づけのないものに飛びつく姿勢を戒める指摘は、AIや自動化の導入にもそのまま当てはまります。
受講検討者や実務者の立場で言えば、AIや自動飛行・自動走行は「判断の材料を速く・正確に用意してくれる相棒」と捉えるのが現実的です。種子選定や肥料設計、点検画像の整理といった定型的・知識集約的な作業は任せ、作物や薬剤の選択、飛行計画の微調整、安全の最終確認といった「条件を読む判断」は人が握る。この役割分担を前提に機械を選べば、高額な投資や補助金も無駄になりにくくなります。そしてその判断力こそ、国家資格の学科・実地や日々の運用を通じて磨かれていくものだと考えます。
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情報リソース
- エアーアシストジャパン(YouTube)/[The Unconventional Farmer Series] Hisamatsu Farm, masters of multi-crop cultivation: Their chall… — 取得日: 2026-10-04
- エアーアシストジャパン(YouTube)/Third Time’s the Charm: Protecting Mandarin Orchards with the T70P Large Drone! How Much Will It … — 取得日: 2026-10-04
- MAZEX(マゼックス)/マゼックスの自動草刈りロボット「Taurus80E」、環境省「農業機械の電動化促進事業」の補助対象農機に正式登録 | 農薬散布等の産業・農業用ドローン製造メーカー【マゼックス】 — 取得日: 2026-10-04
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[The Unconventional Farmer Series] Hisamatsu Farm, masters of multi-crop cultivation: Their chall… ↩↩↩↩↩↩↩
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Third Time’s the Charm: Protecting Mandarin Orchards with the T70P Large Drone! How Much Will It … ↩↩↩↩
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マゼックスの自動草刈りロボット「Taurus80E」、環境省「農業機械の電動化促進事業」の補助対象農機に正式登録 | 農薬散布等の産業・農業用ドローン製造メーカー【マゼックス】 ↩↩↩↩
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