DJI Dock 3で自治体防災はどう変わる?常設運用の要点を読む

「災害が起きてから機材を持ち出す」運用では、初動までにどうしても時間がかかります。その課題に対する一つの答えが、ドローンを平時から待機させておく常設型ドローンポート「DJI Dock」です。結論から言えば、Dockを複数拠点に配置し、離れた本部から一元管理する体制を整えることで、職員が現地へ向かう前に空から被害状況を確認できるようになります2。
この記事では、愛媛県宇和島市の運用事例と、山間部で通信を拡張する検証レポートを手がかりに、自治体がDockを「防災インフラ」として使いこなすためのポイントを、受講検討者・実務者の目線で整理します。
「機材」から「インフラ」へ──宇和島市の広域運用
宇和島市は、市街地に加えて山間部・河川・リアス海岸を抱え、土砂災害や高潮、津波など地域ごとに異なるリスクに備える必要があります。南海トラフ地震の想定震源域に位置し、平成30年7月豪雨の経験も踏まえて、早い段階からドローンを防災に取り入れてきました2。
特徴的なのは、その配置の考え方です。同市では本庁にDJI Dock 2を導入して運用を始めたあと、三間・吉田・津島の各支所にDJI Dock 3を追加配備し、市内を広域にカバーする体制を段階的に築いています2。確認すべき場所は一か所とは限らないため、地域に近い拠点から飛ばせるようにしておくことが、初動時間の短縮につながるという発想です2。
ここで筆者が注目したいのは、機材だけでなく人の体制も同時に整えている点です。宇和島市では消防団を含めて一等無人航空機操縦士の資格取得者が増えており、運用ノウハウの蓄積が進んでいます2。常設型ポートは自動飛行が前提とはいえ、飛行計画の設計や異常時の判断には有資格者の知見が欠かせません。「ハードを入れれば終わり」ではないという当たり前が、ここでも効いています。
「現場は分散、管理は集中」を支える仕組み
拠点が増えるほど、運用管理は複雑になります。各拠点がバラバラに情報を集めていては、市全体を俯瞰した判断は難しくなります。宇和島市はこの課題を、クラウド管理ソフト「DJI FlightHub 2」で解決しています。点在する機体の状態や取得データを一つの画面でまとめ、本庁を司令塔として全体を見渡す「現場は分散、管理は集中」というスタイルです2。
さらに同市は、外部システムからの通知をきっかけに自動で飛行を開始する「トリガーワークフロー」の活用も視野に入れています2。これは「災害発生後に飛ばす」から「発生とほぼ同時に飛ばす」への転換で、職員が現地へ向かう準備をしている間にも、空からの情報収集を先行できる考え方です2。
ただし、こうした自動化は平時の準備があって初めて機能します。飛行ルートや運用フローを事前に整えておくことが、発災時に落ち着いて動ける前提になります2。裏を返せば、訓練飛行や設備点検といった日常運用の積み重ねが、そのまま災害対応力になるということです。
山や尾根が電波を遮る──通信の「死角」への備え
常設ポートを広域に展開するとき、避けて通れないのが電波の問題です。DJI Dock 3の通信距離は最大半径12kmとされますが、これは遮蔽物や干渉のない理想環境での参考値にすぎません。電波は基本的に直進するため、たとえ1km程度の距離でも間に山や尾根があると通信が途切れてしまいます1。
広島県の総合建設会社・鴻治組の現場では、DJI Dockを置いた工区Aから約1km離れた工区Bへ範囲を広げたくても、手前の尾根に電波を遮られて通信が途絶する課題がありました1。そこで検証されたのが、通信範囲を広げる「DJI O4 グラウンドステーション」です。FlightHub 2と連携し、尾根の先にある従来は通信が途絶していた地点への拡張に成功したと報告されています1。設置場所は「Dock本体からの通信限界の手前で、目的地点が見通せる位置」がベストとされます1。
なお、この検証は工事区域として立ち入りを管理したうえで、目視外飛行(カテゴリーII-A)として国土交通省の飛行許可を取得して行われています1。自治体が広域運用を計画する際も、電波が届く前提で線引きせず、地形による死角と必要な許可を織り込むことが現実的です。
もう一つ、通信を伸ばしても「目的地で作業するバッテリーが残らない」という壁があります。これに対しては、渡り鳥のようにDock Aから離陸してDock Bへ着陸する「マルチドック機能」で、途中充電しながら活動範囲を広げる方法が示されています1。複数拠点への配備は、通信とバッテリーの両面から見ても理にかなった構成だと言えます。
まとめ──「入れて終わり」にしない設計を
宇和島市の事例が示すのは、Dockの導入が「機材購入」ではなく「防災体制の見直し」だということです2。複数拠点への分散配置、FlightHub 2による一元管理、トリガーワークフローによる初動の前倒し、そして通信の死角への備え。これらは互いに支え合って初めて、災害時の迅速な状況把握という目的につながります12。
そして忘れてはならないのが、自動化が進むほど、運用を設計し判断できる有資格者の存在が重みを増すという点です2。西濃ドローンアカデミーでは、国家資格の取得はもちろん、飛行計画の考え方や安全確認といった「取ったあとに現場で効く」学びも大切にしています。常設ポートの時代だからこそ、飛ばす人の力を土台から固めていきたいところです。
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