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海洋ドローン(USV)とは?日本の法律・制度と活用事例を解説

「ドローン」と聞くと空を飛ぶ機体を思い浮かべる人がほとんどですが、いま静かに広がりつつあるのが「海の上を走るドローン」、つまり無人水上艇です。結論から言えば、これらを日本で動かすのに「ドローン専用の一本化された法律」はまだ存在せず、既存の船の法体系を用途ごとに当てはめて運用するのが現状です。一方で、国の実証事業や防衛予算が海洋分野へと動き出しており、空のドローンとは別の制度の枠組みを理解しておく価値が高まっています。この記事では、海洋ドローンの正体と活用事例、そして日本で走らせるための制度を実務目線で整理します。

海洋ドローンとは何か──USVとASV

無人で航行する水上艇は一般に「USV(Uncrewed Surface Vessel)」と呼ばれ、自律航行の性格が強いものは「ASV(Autonomous Surface Vehicle)」とも表現されます1。2026年8月に開かれた日本水上ドローン協会の勉強会では、メーカー・行政・利用者がそれぞれの立場から現状を語り、研究対象だった水上ドローンが実務の「道具」へと移りつつある様子が示されました1

この分野は決して新しいだけの技術ではありません。ヤンマーは内閣府のプロジェクトに参画し、2016年度には全長約4.4m・航行時間48時間以上の実証機を海洋研究機関へ納入した実績があります1。船体・推進・操船・通信・センサーを一体で捉える「海洋ロボティクス」として開発が進んできた点は、空のドローンにも通じる考え方だと感じます。

「人を危険な場所へ送らない」という価値

海洋ドローンの本質は、単に船を無人で動かすことではありません。人間が危険を冒して行っていた作業そのものを機械に置き換えることにあります。その好例が、海上保安庁が開発する危険物探知用の無人艇「あるばとろす」です1

この艇は全長3.8m・幅1.9m・速力5ノット以上という小型サイズで、2023年度から開発が進み、2026年度に本格運用へ向けた検証が始まりました1。従来、海上で有毒ガスが発生した事故では、海上保安官が化学防護服を着て現場へ近づき、検知器で確認する必要がありました1。2026年6月の訓練では、隊員が陸上から遠隔操縦し、艇が検知した硫化水素や一酸化炭素の数値を陸のモニターへリアルタイム表示する様子が公開されています1

これは、災害現場や送電線など「人が行くと危険な場所」で空のドローンが普及してきた流れとまったく同じ構造です。海には荒天時の状況確認、港湾・護岸点検、海洋汚染調査、捜索救難など、人を送り込むこと自体がリスクになる業務が数多くあり、水上ドローンが活きる余地は大きいと言えます1

国と防衛が後押しする海洋分野

制度面の動きも明確です。国土交通省は無人の水上・水中システムを「海の次世代モビリティ」として実証してきましたが、2026年度からは事業名そのものが「海洋ドローンの利活用に関する地域モデル創出のための実証事業」へと変わりました1。沿岸・離島の担い手不足や老朽インフラの管理を、データ収集や海中作業の自動化で支える狙いです1。内閣府の戦略でも、日本が世界第6位の広大な管轄海域を持つことを前提に、海洋のポテンシャルを国力へつなげる方針が示されています1

防衛分野でも、2026年度予算で「無人アセット防衛能力」に約2,773億円が計上され、うち1,001億円で空・水上・水中の無人機を組み合わせる多層的な沿岸防衛体制を構築するとされました1。国内では機体部品の国産化も進み、産業用ドローン市場の約9割が海外製とされるなか、国産のフライトコントローラーを量産する動きも出ています2。海の無人化は、人手不足対応から安全保障までを横断する基盤技術になりつつあります。

日本で「走らせる」ための制度

では、実際に海洋ドローンを動かすには何を確認すればよいのでしょうか。ここが空のドローンと大きく違う点です。空には航空法という一本の無人航空機制度がありますが、海には「水上ドローン法」に相当する単独の法律がまだありません1。基本は船舶として扱われ、船舶安全法や海上衝突予防法、港則法などの海事法体系を、用途・船型・航行海域に応じて当てはめていく構造になっています1

ただし、無人運航が制度上まったく想定されていないわけではありません。国土交通省は2019年に「遠隔操縦小型船舶に関する安全ガイドライン」を公表し、総トン数20トン未満の遠隔操縦艇を「特殊船」として国が検査したうえで、承認された運航マニュアルに従えば無人運航を可能とする枠組みを整えています1。原則として遠隔操縦位置から3海里以内という航行条件も示されました1。さらに国際面では、2026年5月にIMOで自動運航船の設計・運用を体系化した「MASSコード」が策定され、当面は任意の運用ながら2032年の義務化に向けた議論が予定されています1

実務者にとって重要なのは、「機体の性能」だけでなく「どの海域で・どの法令に沿って・どんな承認を得て動かすか」という運用設計の視点です。この点は、空のドローンで飛行許可や運航ルールを組み立てる考え方と共通しており、資格や運航管理を学んだ経験が海の分野にも応用できると考えます。

まとめ

海洋ドローンは、荒れた海や有毒ガスの現場など「人が近づきたくない場所」の仕事を置き換えるツールとして、実証から実装の段階へ移りつつあります1。制度はまだ既存の海事法を組み合わせる過渡期にあり、遠隔操縦のガイドラインや国際コードの整備が進む今こそ、動向を追う価値があります1。空のドローンで培われる「運航管理」「安全ルールの読み解き」「遠隔操作の基礎」は、海の無人化にも通じる普遍的な力です。西濃ドローンアカデミーでも、機体の操作だけでなく、法令やリスク評価を踏まえた運用の考え方を大切にしています。空から海へと広がる無人化の潮流を、確かな基礎とともに見据えていきましょう。

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