ドローン点検データの後処理を効率化|DJI TerraとFlightHub 2の新機能まとめ

ドローンで点検や測量を行う現場では、実は「飛ばす作業」よりも、撮ったあとのデータ整理・帳票づくり・共有のほうに時間を取られがちです。結論から言えば、2026年に相次いだDJI TerraとFlightHub 2のアップデートは、この“撮った後”の負担を減らす方向にはっきり舵を切っています。ここでは、測量・点検の実務者目線で「何が楽になるのか」を整理します。
なぜ「撮った後」が現場の課題になるのか
高精細なカメラやLiDARで大量のデータを取得できるようになった一方、そのデータを成果物に仕上げる工程は依然として手作業が多く残っています。特に公共測量では提出書類の作成に多くの工数がかかりますし、点検業務でも「どの写真のどの箇所が不具合か」を後から突き合わせる作業は地味に重い負担です。つまり、機体やカメラの性能が上がるほど、後処理の効率が全体の生産性を左右するようになってきた、というのが今の実情だと考えます。
DJI Terra v5.3.0:帳票・サーマル・データ整理の改善
測量・点検向けの解析ソフト「DJI Terra」は、2026年7月23日にv5.3.0へアップデートされました2。実務に効く変更点をいくつか見ていきます。
公共測量の標準様式を一部自動入力
今回、LiDAR構築において日本の公共測量「作業規定の準則」に準拠した標準様式のうち、Terraが出力できる項目について自動入力できるようになりました2。従来は解析後に帳票を手作業でつくるケースが多かったため、書類作成の時間短縮につながります2。ただし注意したいのは、これは「出力できなかった項目が新たに増えた」わけではなく、Terraで入力できる部分のみが埋まる仕組みだという点です。様式には作業者が自分で記入しなければならない箇所も多く残るため、協議や別資料の準備は従来どおり必要になります2。
サーマル画像を「温度付きオルソ」にできる
赤外線(サーマル)点検を行う人にとって便利なのが、取得したサーマル画像から温度情報を保持したオルソ画像を生成できるようになった点です2。温度パレットや表示範囲を変えられ、広範囲を一枚の画像として温度で見渡せるため、太陽光発電所や建物診断、設備点検で異常箇所を把握しやすくなります2。撮影データをそのまま読み込めばRGBとサーマルを自動判別してくれるので、事前の仕分けも不要です2。対応機種はZenmuse H30T・H20T・H20N、Matrice 4T/4TD、Mavic 3Tとされています2。なお、重ね合わせによるオルソ上の温度はおおよその値のため、精密な判断が必要なときは元のサーマル画像を確認する運用が前提になります2。
データ整理まわりの地味だが効く改善
そのほか、動画(MP4・TS形式)から自動でフレームを抽出して3Dモデルを生成できるようになったほか2、点群の出力形式がLAS/LAZ 1.4に対応し、複数形式を一度の再構築でまとめて出力できるようになりました2。納品先ごとにフォーマットが違う現場では地味に助かる仕様です。加えて、大量に溜まる一時キャッシュをワンクリックで削除できる機能や、操作やエラー対処を尋ねられるAIアシスタント、処理状況を一覧できる実行記録も追加されています2。
FlightHub 2:飛行記録の可視化と不具合の“ひも付け”
遠隔運用を支えるクラウド「DJI FlightHub 2」も、2026年6月に相次いで更新されました3。実務で効くのは大きく二つです。
一つは、過去の飛行ルートと当時撮影した動画を同時に連動再生できるようになったこと3。「この瞬間に機体がどこを、どの方向で撮っていたか」が一目で分かるため、映像から対象物の位置を特定したい鳥獣害対策などのニーズに応えやすくなりました3。もう一つは分析機能(アナライザー)の強化で、点検写真にクラックやサビの印を付けると3Dモデル上の同じ場所に自動反映され、逆にモデル上で右クリックすると該当箇所の元の高解像度写真を呼び出せます3。写真とモデルを行き来する手間が減り、報告書づくりの精度と速度が上がる改善だと言えます。
さらに、機体と真下の地面との距離(対地高度)をグラフで可視化できるようになり、山林の斜面のように高低差の大きい現場でも、航空法の150m未満ルールを守れていたかを後から確認・証明しやすくなりました3。飛行中に対地高度が一定を超えるとアラートで知らせる機能も追加されています3。
「撮る側」の進化と組み合わせて考える
こうした後処理の改善は、撮影側の機能と組み合わせて初めて生きます。たとえば産業用機体のMatrice 400は最大飛行時間59分・最大6kgのペイロードに対応し1、搭載するZenmuse H30Tはズーム・広角・赤外線サーマル・レーザー距離計・NIR補助ライトを一体化したマルチセンサーカメラで、ズームは有効4000万画素・光学34倍に対応します1。送電線点検では、LiDARで送電線を認識し一定の離隔と画角を保って自動追従する「送電線フォロー」により、撮影条件をそろえてデータのばらつきを抑えられるとされています14。均質に撮ったデータをTerraやFlightHub 2で効率よく成果物にする、という一連の流れが整いつつあるわけです。
まとめ
一連のアップデートに共通するのは、「撮影の自動化」から一歩進んで、撮った後の帳票作成・データ整理・不具合の共有までを効率化しようという方向性です。裏を返せば、これからの点検・測量では、機体を飛ばす技術だけでなく、成果物を正しくまとめ、後から説明できる形で残す力が問われます。西濃ドローンアカデミーでは、国家資格の取得から飛行記録の残し方、取得データの活用まで、現場で通用する運用力を意識した学びを大切にしています。新しい機能を「使いこなす前提の運用」を身につける第一歩として、活用いただければと思います。
情報リソース
- セキド(産業用ドローン)/送電線点検の撮影を効率化|Matrice 400×H30Tの送電線フォローを実機検証 – セキド オンラインストア — 取得日: 2026-08-13
- セキド(産業用ドローン)/DJI Terra v5.3.0アップデート解説|公共測量様式の自動出力対応・サーマル解析・3Dモデル生成の新機能を紹介 – セキド オンラインストア — 取得日: 2026-08-13
- セキド(産業用ドローン)/DJI FlightHub 2の最新アップデートを解説|飛行動画の同期再生・3Dモデル分析・自動飛行を強化 – セキド オンラインストア — 取得日: 2026-08-13
- システムファイブ(DJI情報)/DJI Zenmuse H30シリーズ機能「送電線フォロー機能」の使い方 — 取得日: 2026-08-13
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